交通事故でむち打ち症になった場合、症状固定後(治療終了後)に加害者の保険会社から「損害賠償額計算書」(慰謝料等の提案書)と「損害賠償に関する承諾書」(免責証書)が送られてくることがあります。
しかし、保険会社の損害賠償額計算書に記載されている慰謝料等の金額は、自賠責保険の基準を参考にした保険会社独自の基準で計算した提案金額です。保険会社の提案金額も、それなりの根拠を有する金額ですので決して不当な金額ではありませんが、弁護士に依頼することにより裁判基準で計算すると、慰謝料等の金額が増加することがあります。
むち打ち症の通院慰謝料については、「損害賠償額算定基準」が裁判基準(弁護士基準)として公開されていますので、その情報を分かりやすく要約して紹介します。
事実
例えば、整形外科医院に、週2日ずつ26週間(6ヶ月)通院して、治療が終了した場合。
自賠責保険の基準
「①治療期間」と「②実治療日数の2倍」を比較して少ない方の日数に、1日あたり4200円を掛けて計算した金額になります。
具体的に計算すると、
①治療期間=26週間×7日=182日
②実治療日数の2倍=週2日×26週間×2倍=104日
少ない方の日数は②の104日なので、
1日4200円×104日=43万6800円
裁判基準
「損害賠償算定基準」によれば、むち打ち症で6ヶ月通院した場合の通院慰謝料は89万円。
より良い示談解決のために
保険会社の基準は、自賠責保険の基準を参考にして増額した基準になっていることが多いので、裁判基準(弁護士に依頼した場合の基準)と比較すると大きな違いがあることが多くなります。
ですから、保険会社から「損害賠償額計算書」(慰謝料等の提案書)が送られてきたら、「損害賠償に関する承諾書」(免責証書)に署名捺印してしまう前に、弁護士にご相談下さい。
ただし、裁判基準は、裁判所に訴訟を提起して訴訟費用と多くの時間を費やし、裁判所が最高額の判決を出してくれた場合の基準ですので、示談交渉で早期に解決する場合には保険会社の基準と裁判基準の間の金額で示談解決することになります。また、弁護士費用も考慮に入れる必要があります。
そこで、弁護士に相談する時は、「弁護士に依頼することにより増額できる金額はどのくらいと予想されるのか」「弁護士費用はいくらなのか」について、弁護士からよく説明を受け、弁護士に依頼することがどのくらい有利なのかを、弁護士と一緒に考え、検討することが大切です。
なお、ご自身が加入している自動車保険に弁護士特約が付いている場合には、弁護士費用は保険会社が負担してくれますので、弁護士にご相談下さい。
弁護士 秋 山 誠
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