電気的除細動後の脳梗塞発症・医療事故の裁判例情報

 医療事故のうち、医師に注意義務違反がある場合が医療過誤となります。
電気的除細動後の脳梗塞発症について、医師の注意義務違反を認めた裁判例としては、岐阜地方裁判所平成21年6月28日判決が裁判例情報として公開されていますので、その情報を要約して紹介します。

 

 事実(要約)

 平成15年11月、医師は心房細動と診断し、電気的除細動を行った。その3日後に、患者は退院となり、退院の翌日に脳梗塞を発症して、右半身不随,言語障害等の後遺障害が残存した。

 平成13年ガイドラインで、電気的除細動施行後はワーファリンによる抗凝固療法(INR2~3)を4週間継続する事が推奨されていたが、本件の場合、退院時のINR値(INR1.2)が推奨レベル(INR2~3)に達していなかった。

 また、ワーファリンを増量して退院させたとしても,ワーファリン増量の効果が発現するまでには2日ほど要する状態であった。

 

 裁判所の判断(要約)

  退院時の抗凝固レベルは不十分かつ塞栓症発生の危険が高い状態であり、退院後、ワーファリン増量の効果が発現するのになお数日を要する状態であったのであるから、担当医師には、入院を継続してヘパリンによる抗凝固療法を中止することなく併用しつつ、ワーファリンの投与量を調節して推奨抗凝固レベルを確保する入院を継続させて、患者の状態を観察する注意義務があった。

 担当医師は、患者の退院希望を制することなく受け入れており、担当医師は患者の抗凝固レベルが推奨レベルになるまでの間、入院を継続し、患者の状態を観察する注意義務を怠ったといえる。

 

 より良い医療のために

 この裁判例は、平成15年当時の医療水準に基づいて医師の注意義務について判断しています。医学の進歩に伴い、医師の注意義務の内容も変化していきます。

 しかし、医師が勉強不足でガイドラインを知らずに診療行為をしている場合には、医療過誤になりやすいという点は変わらないと思います。また、医師がガイドラインを知りながら、あえてガイドラインと異なる診療行為をする場合には、ガイドラインと異なる診療行為をすることの医学的根拠を患者に説明しておかないと、医療過誤になりやすいという点も変わらないと思います。

 
 弁護士 秋 山   誠

 

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